月刊・教室だより
名物先生によるリレー連載(毎月20日更新)
【連載第217回】
ムラサキカタバミ
私の住んでいるアパートの取り壊しが決まりました。Samurai Green 2002と名付けた相棒の自転車を処分し、徒歩通勤の楽しさに目覚めた矢先の出来事でした。大学3年生の時に引っ越して以来30年以上住み続けたことになります。一時的な仮住まいだからと内見もせずに適当に選んだ場所です。こんなに長く住むとは当時は思いもしませんでした。
学生寮からの引っ越しは、レンタカーを借りて寮生4人に手伝ってもらいました。2階に住む老夫婦の大家さんから、「もう少し静かに作業してね」と注意されたのも懐かしい思い出です。引っ越し初日は、電気を引くことを忘れていて真っ暗な中で荷ほどきをせざるを得ませんでした。その後、様々な人が私のアパートを訪ねてきました。麻雀仲間の後輩2人が近所に引っ越してきたため、頻繁に「打ちに行きましょうよ」とやってくるので居留守を使ったこともありました。大学の数学のテストが絶望的だったので、建築学科の先輩に家庭教師を頼んだこともありました。田舎の妹が宿泊代を浮かすために友達と一緒に泊まりに来たこともありました。その友達のいびきで全然眠れず、近くのモスバーガーに緊急避難しました。大雪のため電車が止まり帰宅不能になった相原先生と今井先生が泊まりに来たこともありました。2人とも我が家の漫画を読みふけり、夜通し一緒にゴルフゲームに興じました。
一方、招かざる客もいました。Gはもちろんのこと、手のひらサイズの見たこともないクモとも戦いました。米櫃をしばらく放置したため、大量の虫が発生したこともありました。エアコンの室外機の上と自転車のかごを野良猫に占拠されたこともありました。さらに、5年ほど前から物干しの下にムラサキカタバミが自生し始めました。調べたところ、アスファルトだらけの都会の乾燥した厳しい環境にもびくともしない雑草のようです。黄色のカタバミの方が有名でしょうか。ゴールデンウイークあたりになると、コンクリートのわずかな隙間からハート型の葉っぱが茂り、紫色の花がたくさん咲きます。見た目の愛らしさとは裏腹にその繁殖力はすさまじく、年々勢力を拡大し縁側の80%を埋め尽すに至りました。彼らの姿を見るのも今年限りと思うと引っこ抜く気にもなりません。取り壊しの日まで思う存分咲き誇ってください。
転居先はまだ決まっていません。どうしようかと途方に暮れている状態です。新しい場所での生活もとても不安です。ムラサキカタバミのごとく「雑草魂」でどんな環境でも乗り切っていこうと思っています。
Lookin’ for the FACES
Lookin’ for the PLACES
Best of my life (FACES PLACES by globe)
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